尾白川の元プール

ボーダー・コリーを飼って、犬を川に泳がせに行くようになって数年。
一番のお気に入りの場所は白州の尾白川の砂防堰堤でした。
見よ!この透明度!まさに南アルプス天然水!

砂防堰堤のスリット幅が良かったらしく、堰堤下のプールには土砂の堆積が少ないため、犬が泳ぐのに適した深さが維持されていました。

ところが昨年の春から工事が始まり、

コンクリート製の堰堤は解体され、ジャングルジムのような鋼製堰堤に切り替わりました。

尾白川流域は、南アルプスから駆け下りる急勾配が、糸魚川 - 静岡構造線を横断するため、崩壊地が多数あって土砂が大量に流下し、過去にも多くの土石流で被害をもたらしています。

鋼製堰堤に替えることによって、ふだんは土砂や岩を堆積させることなく順次流して堆積を防ぎ、大量の雨が降ったときには水を流しつつ、流木や岩を流さないしくみなのでしょう。
(コンクリート堰堤も、もとはといえばスリットが入っていなかったものを、少水量時には土砂を流すように改良されたものらしいです。
富士川砂防事務所のパンフレットより

)

鋼製堰堤になり、流れの幅が広くなったことで水流が弱まったせいか、プールに土砂が貯まってしまい、完成直後の 5 月には犬も泳げたものの、8 月には泳げるほどの水位がなくなってしまいました。
5 月
ライブカメラに私も写り込んでいます (笑)
8 月

そして、今回の台風 19 号。
北杜市内でも、大泉のある八ヶ岳南麓ではそれほど多くの雨量ではありませんでしたが、南アルプスの麓では大量の雨が降り続けました。

2019年10月12日土曜日 9:25

午前中は、土砂を含む大量の水が普段より多く流れている程度でしたが、午後になると、川の勢いはさらに増し、尾白川は荒れ狂っていきます。

2019年10月12日土曜日 15:20
このころには堰堤に流木がひっかかり始め、土砂や岩の流下が止まりはじめます。
台風が通過した夜間は、照明も月明かりもないためにライブカメラで様子を確認することができませんでした。
一夜明けた 13 日朝。

2019年10月13日日曜日 7:28

流木で完全にせき止められた、変わり果てた堰堤の姿になっていました。
大量の湛水の水圧で堰堤が破壊され、土砂が一気に流下して土石流を引き起こすのではないか心配になりました。

2019年10月13日日曜日 15:08

午後になると水量も減って、だいぶ様子がわかるようになりました。
どうやら、堰堤の上端の高さ (3 m ほどはあるか?) まで土砂が堆積し、河床が上昇してしまったようです。
そのため、堰堤にかかる圧はそれほどでもないのかもしれません。

2019年10月15日火曜日 13:45

今日の様子をみると、水量はさらに減って通常と同じくらいになったようです。
濁りも減ってきたようです。

というわけで、この台風で大きく様変わりしてしまった尾白川。
砂防堰堤は、しっかりと計画通りに機能し、大量の土砂が一気に流れて土石流になるのを防いでくれたようです。
しかし、すでに堰堤の天端まで土砂は貯まってしまったので、今後の砂防効果は期待できないものになってしまいました。
今後は堆積した土砂を、順次運び出していくのでしょうか。

渓相も全く変わってしまったので、渓流魚への影響も甚大なものなのでは無いでしょうか。
元の自然環境に戻るには、これから何年かかるのでしょうか…。
今年の夏にはこの上流に泳がせに行きました (その時の記事) が、あのあたりはどうなっているのでしょうか。

今後も見守り続けていきたいと思います。

(以下、5 月の砂防堰堤プールでの水遊び)



コメント